AI人事は職場恋愛を許すのか?

AI人事は職場恋愛を許すのか?

採用面接に、AIを活用することが期待されています。
「AI人事」という構想です。
あらかじめ応募者の性格や適性を分類した上で、採用を決定したり、どんな業務を任せるべきか、人の判断よりも素早く行えるのです。
人の場合は感情的な判断がついて回りますが、出世欲や失敗に対する恐怖心のないAIにそんなものは関係ありません。
どんな部署にどんな人間が向いているかを、与えられたデータに基づいて、決定権をもつ人物に進言することになります。
もちろんAIが置かれるのは採用時の一瞬だけでなく、日々の仕事ぶりで評価ポイントをつける場面でも大いに活用されると思われます。

AI人事が誕生した場合の、具体的なメリットとデメリットを考えてみましょう。

コネ採用はなくなる?

「今度取引先の息子がウチに入社してくるらしい」
という話は珍しくも何ともありません。

ニュースではあまりよい印象のない「コネ採用」ですが、気心知れた仲間同士というのは、協調性が生まれやすく、ストレスが少ない労働環境です。

上司の後ろ盾をとって、他の社員に仕事を押し付けるほど度が過ぎた態度でなければ、むしろ効率アップにつながります。

ここで問題になるのは、書類や面接場でのデータしか見られないAIが、人間同士のバックボーンをどのくらい考慮できるのか、ということでしょう。
募集要項の資格を満たしているか、職業適性はあるのか、ということはAIでも一応判断できますが、「全く能力がないにもかかわらず、この人間を採用することが会社に一定の利益を生むことが予想される」という政治的な判断をすることはほとんど不可能です(大体そういうハナシはクローズドに進むものでもあります)。
10年ぐらい付き合いのある恩人との縁故で雇われた社員であっても、AIには全く関係がありません。即戦力にもならず、これ以上の成長も望めない者に対しては容赦なく「不採用です」「クビを切った方が良いでしょう」と判断することになります。
もちろん、最終的な決定権が人間に残っている内はAIの意見が簡単に採用されることはないでしょう。ただし、縁故採用の社員自体が能力不足の場合はちょうど良い口実ができることになります。

ケンカする社員同士の仲裁はできない

これからの時代、「AIのせいで職を失ったんだ」と、AIを嫌いになってしまう人も出てくるかもしれません。
しかし、AIが社会に浸透していない現代の職場でも、人が人を嫌いになってしまう状況―ケンカやいじめは頻繁に起こっています。元の性格が合わない人同士が職場で近くにいるから起こってしまう現象ではありますが、業務の関係上すぐに配置換えとはいかないこともあります。
諍いを起こした社員同士であっても仕事を継続して続けてもらいたいなら、彼らの関係修復にはかなり慎重なケアが必要になります。簡単に「どちらが悪い」と決めつけてしまうことで、状況を更に悪化させてしまうこともあるからです。
ケンカの仲裁など面倒だと思うでしょうが、これこそが人間にできてAIにできないことなのです。感情的になっている社員の背中を叩いてなだめたり、説得して本人の問題点などを遠回しに自覚させることで、配置転換までの間を穏便に済ませる……
そんな、したたかな人間らしさを磨くことが必要になるでしょう。

職場恋愛は滅亡する?

「私事を仕事に持ち込まない」ことが立派なビジネスマンとして当然のマナーとされていますが、実際プライベートで起こった事件が仕事にまるで影響が出ない人間などいないでしょう。是非はともかく、そういった公私混同をなるべく避けるためにも、職場恋愛などを禁止している会社も国内には多くあります。
管理側が禁止まではしていなくても、別れた場合の社員同士の感情の起伏をかなり危惧しています。付き合っているという確証を得た段階で配置転換し、社内の雰囲気や業務への影響を最小限に抑えようと試みるわけです。
AIが職場で男女の恋愛問題を管理しようとするなら、男女の区域を完全分離してしまうかもしれません。それは極端な提案ですが、お互いに好意を持たないように業務中それとなくプレッシャーをかけてくる可能性は十分にあります。
会社で気の合う相手を見つけようとするのは、今まで以上に難しくなるでしょう。

仕事に感情はいらないのか
感情があるように見えるAI(というよりチャットボット)はそれなりに形になりつつありますが、やはり多くの部分で不完全なモノです。
人間の経験がAIに引き継がれるまでには、まだまだ多くの時間が必要になるでしょう。
仕事に人間的な感情などいらない、といわれた時代もありましたが、それは人間が会社の「歯車」として働くことを求められていたためです。今や、セルフレジや工場ロボットなど本物の機械たちが、「歯車」としての役割をこなせるまでに成長している時代です。
以前には重要視されてこなかった「感情」「快不快」に基づく生き方や働き方を、より多くの人が手に入れることができるようになります。
理不尽な労働環境を改善することが出来れば、ストレスがなくなって作業効率が高まるでしょう。
採算を度外視した情熱が、最終的には利益を生む場合もあります。
利益を追求するマシーンではなく、どんなことに喜び、何に悲しくなるのかを考えながら、他人と協力して生きていくのが、人間本来の生き方と言えるのではないでしょうか。

人それぞれの感情が生み出す多様性や創造性を拾い上げることで、社会全体に有意義なイノベーションが生まれるのです。

MonAmie